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【読書感想文】アーモンド|ネタバレなし 本屋大賞 翻訳小説部門一位

アーモンドは2020年 本屋大賞 翻訳小説部門 第一位となった作品です。

アーモンド ソン・ウォンピョン 矢島暁子訳

無表情の男の子の顔が印象的なカバー。思わず、本屋で手に取ってみた方も多いのではないでしょうか。

この男の子が無表情なのはなぜなのか。ネタバレしない範囲でお伝えしたいと思います。

小説アーモンドの主人公の顔

物語の主人公はユンジェという男の子。6歳の時、失感情症と診断されました。

扁桃体が人より小さいため、喜び、悲しみ、愛や恐怖をほとんど感じることができません。

ある出来事で彼はひとりぼっちで暮らすことになります。

感情のないユンジェは悲しむことも泣き叫ぶこともなく物語は淡々とすすんでいきます。

思いがけない展開にページを留めることが出来ず、一気読みしてしまいました。

読み終わった後、もう一度ユンジェに会いたくて再びページを開いてしまいたくなる小説です。

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小説アーモンド|あらすじ

小説のタイトルのアーモンドとは扁桃体のこと。

人は誰でも耳のあたりの脳深くに左右ひとつずつ扁桃体があります。

扁桃体はアーモンドのような形をしていて神経細胞の集まりで感情に関わる働きします。

主人公の男の子はユンジェ。扁桃体(アーモンド)が人よりも小さいため、感情を持てない男の子。

嬉しいこと、悲しいこと、ドキドキすることなど、喜怒哀楽がどんなものなのか全く分からないのです。

ユンジェはシングルマザーの母親とおばあちゃんの3人暮らし。

母親は彼が幼い頃から”ある教育”を始めました。

ユンジェが人と違うことをまわりの人々が気付かぬようにする事が目的でした。

例えば、相手が笑う→自分も微笑む 車が向かってくる→ぶつからないように片側に寄るなど。

教育内容もユンジェが成長するにつれて少しずつ増えて複雑になっていきます。

ユンジェの母親は喜怒哀楽愛悪欲ゲームを作り、状況によって相手の感情を当てる練習をします。

綺麗で泣き虫なお母さんといつも豪快に笑うおばあちゃんとの3人暮らしがユンジェの15歳の誕生日に一転します。

ユンジェのお母さんとおばあちゃんが通り魔に襲われ、ユンジェはひとりぼっちに。

そんな中、ユンジェは同い年の男の子ゴニと出会います。

ゴニは15歳、札付きの不良で問題児。

そんなゴニにとって感情のないユンジェが格好のイジメの対象になり、様々な出来事が起こっていくお話です。

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小説アーモンド|印象に残ったところ

人によってはまずい食べ物でも喜んだり感謝したりすることもあるわ

ある時ユンジェは母親に誰かが作ってくれたまずい食べ物を食べた時は何を感じるか?と聞きます。ユンジェのお母さんはこう答えました。

基本的には、食べ物がまずいと怒りを感じるわね。でも人によってはまずい食べ物でも喜んだり感謝したりすることもあるわ

私だったら、この感情をどう表すだろう…。

素敵な雰囲気でレヴューも良いレストランに入ったとします。

そこで実際に口にした料理が不味かったら、がっかりするだろうし、お金と時間の無駄になったと足を運んだ自分にも腹が立ちます。

でも、自分の子供や母親が作ってくれたお味噌汁がしょっぱ過ぎた時はどうでしょう?

私だったら、ちょっとしょっぱいけど、美味しいね。ありがとうとお礼を言うと思います。

本は僕が行くことのできない場所に一瞬のうちに僕を連れて行ってくれた

ユンジェの母親は古本屋を構え、それを生活費の足しにしていました。

ユンジェには古本に囲まれた場所が居心地の良い場所だと言っています。

本は僕が行くことのできない場所に一瞬のうちに僕を連れて行ってくれた。

会うことのできない人の告白を聞かせてくれ、見ることのできない人の人生を見せてくれた。

僕が感じられない感情、経験できない事件が、本の中にはぎっしり詰まっていた。

それはテレビや映画とはまるで違っていた。

本好きなら、きっと深くうなづいてしまいますね。

本は空間だらけだ。文字と文字の間も空いているし、行と行の間にも隙間がある。

僕はその中に入っていって、座ったり、歩いたり、自分の思ったことを書くことができる。

意味が分からなくても関係ない。どのページでも、開けばとりあえず本を読む目的の半分は達成している。

私はやっぱり電子書籍よりもユンジェの言うように形のある本が好きです。

ページをめくる時に指先に伝わる紙の触り心地がなんとも言えません。

人をいじめて、相手の悲しそうな顔をみて喜ぶ子たち。

ユンジェのクラスに問題児のゴニが転校してきてから、ゴニはユンジェをいじめることを新しい趣味にしました。

突然殴りかかったり、ふいに足を出してユンジェを転ばせたり。けれど、ユンジェは終始一貫相手にしませんでした。

ゴニが僕にどんなどんな反応をもとめているのかは、分かりきっていた。

小学校の時も、中学校の時も、そんな子たちがいた。

人をいじめて、相手の悲しそうな顔を見て喜ぶ子たち。

お願いだからやめてくれと懇願してくることを望む子たち。

そういう子たちは大抵、自分の力で望みをかなえる。

 

でも僕は知っていた。ゴニの望みがちょっとでも僕の表情に何か変化をみることなら、永遠に僕には勝てないということを。

そうすればするほど、力を消耗するのはゴニの方だということも。

扁桃体が人より小さくても痛みは感じることができます。

でも悔しい、悲しい、怖いなどの感情がないユンジェはどんなにいじめられても表情を変えることはないのです。

本を読み進めるうちに、ユンジェのことが気になって仕方ありませんでした。

ゴニがとんでもないことをして彼が大変な目にあってしまうのではないかと。

プロローグでユンジェは私たちに語りかけます。

どんな物語でも、本当のところそれが悲劇なのか喜劇なのかは、あなたにも僕にも、誰にも永遠にわからないことだから。

はたして、この小説は悲劇で終わるのでしょうか、喜劇なのでしょうか。

このまま感想文を書き続けてしまうと、あなたの楽しみを奪ってしまうことになります。ですので、私の感想はこの辺で終わりにしたいと思います。

ユンジェの日々を覗いてみてくださいね。

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まる
おうち大好き。たぶんHSS型HSP。 バイマでご飯食べています。アマゾンオーディブルが好き。筋トレとなわとびも好きです。