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ツミデミック|アマゾンオーディブルで聴いてみた感想

ツミデミック読書感想文

パンデミックと罪を造語にしてツミデミック。この小説は6つのストーリーから成り立っている。後味の悪い話もあれば、ほわんとする話もある。

コロナで全世界が不安の暗雲に包まれていたのは数年前のこと。あの頃に元気いっぱい夢いっぱいだったと言える人は間違いなく火星でひとりでも生きていけると思う。わたしは苦しかったけど。

あのパンデミックの不穏な時期を過ごした自分を思い出してしまうのがこの小説ツミデミックだ。

結論からいいます。著者の「光のところにいてね」がとても好きだったので、おなじ気持ちで読むと裏切られます。

ただし、よい意味の裏切りです。「光のところにいてね」の空気感は全く感じることがないツミデミックでした。

どちらかといえば、著者の別の作品「スモールワールズ」の空気感に近いかな。読んでいて胸のあたりがザワザワしてくる感じです。

タイトル:ツミデミック

著者:一穂ミチ

アマゾンオーディブル再生時間:7時間11分

ナレーター:馬場蘭子

6つのストーリーの簡単なあらすじと感想を述べます。ネタバレはしないのでご安心ください。

目次

あらすじと感想

違う羽の鳥

大学を中退してダラダラした日々を過ごす青年。生活費を稼ぐため、都内で客引きのバイトをしていた。

バイト中に自分に話しかけてきた女性は中学の時に死んだ同級生と同じ名前だった。

バイト終わりに会う約束をした青年。死んだ同級と同じなまえは偶然なのか、それとも….。



1話めからガツンと度肝を抜かれます。いきなり読者をここまで落とすのか?!と思いました。考えれば考えるほど、怖くなる。こわいお話でした。

ロマンス

幼い女の子を子供にもつ母親。夫は家事も育児も妻に任せっきりで仕事から帰ってくると機嫌が悪い。
おまけに主婦は気軽でいいよなとかチクチクと彼女の気持ちをさかなでる。

仕事も探したいけど、育児も家事も大変なのに。ストレスが溜まる日々を過ごす母親。

ある日、自転車でデリバリー配達中のかなりのイケメンを見かける。そのイケメンに会いたいがために母親はデリバリー配達を注文することになる。

1度きりのつもりが、2度、3度とやめられなくなる。いつかのイケメンが配達にくることを期待して注文中毒に落ちいっていく話。


…..後味わるかった。でもおもしろい!
この母親の気持ちもわかる。わたしの家も配達にくるお兄さんが爽やかイケメンだったから配達日は楽しみにしていた。

それ以上なにも期待はしていない。でも気持ちが高揚していたのは確かだ。

じゃ、なぜ気持ちが高揚したのか?それは普段見慣れている夫ではない男性の笑顔が新鮮だったからだよね。まさしくロマンス

燐光

記憶がぼんやりはっきりしない状態で目覚める少女。少しずつ、自分の状況がわかってくる。

その少女はすでに命を落としてスピリチュアルな存在のまま、彷徨っていることに気づく。

仲がよかった女友達、母親、高校の担任の教師。彼らのあとをついていくことで、彼女自身が生きていた頃の行動を思い出しはじめる。

事故で命を落としたんだろうなと思いつつ、他の登場人物がでてくると誰もが怪しくみえて本当は殺されちゃったの?と話に引き込まれ、ぐいぐいと先の展開を知りたくなって止まらない。

お決まりの展開になるのかなと思いきや、ラストは違う方向へ。

命を落とした少女はピュアな心の持ち主だった。わたしもピュアな気持ちを持とうと思い直させてくれる作品。

特別縁故者

パンデミックが原因でシェフの仕事を失った男の話。男には家族がいて妻が朝から晩まで働き続け、なんとか生活をしている状態。

遊び盛りの男の息子が外でボールで遊んでいると、ボールが近所の家の庭に入ってしまった。ボールを取りにいった家は一人暮らしの老いた男性が暮らしていた。

息子がいうにはどの老いた男性の家のタンスの中にはお金がたくさんはいっていたという。

なんとかおこぼれをもらいたい一心で男は一人暮らしの老いた男性の家を尋ねることにする。



6つの小説のなかでいちばん好きな作品。読者の気持ちをうまく操っている。

一人暮らしでお金持ちの老人のお手伝いを縁に多額のお金が舞い込んできたらなあ、老人にすっごく感謝されて土地を譲ってもらえたらなあ、とか夢みたことありませんか?

現実はそんなにうまくいくものじゃありません。この小説も同じです。じゃ、このお話の行方は??
気になる方はぜひ読んでみてくださいね。

祝福の歌

高校生の娘が妊娠。子供を産んで相手の同級生と結婚すると言い張る。娘の父親が主人公のお話。

ネットをみてみると”祝福の歌”がよかったという声もみかけました。ごめんなさい。わたしはぜんぜん心に残らない作品でした。

さざなみドライブ

SEOを通じて知り合った男女5人。年齢もバラバラだけれど共通点はみずからの死を望むことだった。

5人は待ち合わせをして山の奥へと車ですすんでいく。目的地に着くまでそれぞれが死を決めたきっかけについて話していく。

人の悩みって千差万別で、他の人にとってたいしたことがなくても本人にとっては命にかかるくらい重要なこともあるんですよね。

感受性や悩みの深さって数値化できないからむずかしい。

この5人は目的地にたどり着くまで、お互いの胸のうちを打ちあけた。それぞれの現状はなにひとつ変わっていないけれど、話をしたことによって変化がうまれる話だった。

わたしはよっぽど信用できる人でないと、心の奥底はみせません。

でもこうやってブログのように発信する場所があるから良かった。そうゆう場所があってよかった。ブログ最高だね。

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